Bern Hip SymposiumはMüller 先生、Ganz 先生といった股関節学の大家が率いていたスイス屈指の名門であるINSEL SPITALが主催する歴史あるカンファレンスで、主に股関節温存について世界中から専門家があつまり知見のアップデートを行う会であります。
スイスといえばAO Foundationを連想される方が多いかもしれません。Müller 先生は創設者の一人です。AQ seminarでDavosを訪れたマリアンナの先生も多いのでないでしょうか?いかれたことのある先生はご存じだと思いますが、スイスは九州程度の大きさの国で、首都のBERNでも人口は15万人に満たい小さい街です。しかし国際機関の本部が国中に置かれており、国家としての信用度は随一であります。
私がマリアンナの同門会に入れていただいてから早4年の月日がたっていますが、前回に引き続き今回も同会に参加させていただいきました。実は今回のSymposiumはスイスが新型コロナでロックダウンする直前に行われることになったギリギリの会でした (2/27-29)。
以降の学会はweb以外行われなくなりました。ヨーロッパに忍び寄るコロナの影響はこの後甚大な被害をもたらすことになるのです。まさに最後の学会でした。チェアマンのSiebenrock 教授のopening remarksもスライドの一枚目がコロナウイルスの電顕像であったのが印象的でした。私はフランクからICEでベルンに入りましたが、思い起こせば道行く人たちの生活はいつもと変わった様子はありませんでしたが、中国人と思しき人はただの一人もみかけませんでした。しかし水面下では準備している市民が多かったからでしょうか、当時マスクが日本では粘渇していましたので、マスクを買っていこうと思いましたがどの薬局も売り切れでした。
今回は実はわたくしが留学中に行っていた研究の発表をかねているので、参加にいたっては時間をかけて再度統計やデータの整理を行い、関連文献の洗い出しなどを行うことになりました。渡航に際しては大学や外務省から中止といわれるのを恐れておりましたが、何とか開催されてよかったです。Presenterは当時一緒に研究していたInsel出身のTannast 教授(現フライブルク大整形外科教授)で私のペーパーでスライドを作成して発表いたしました。少し年月が経過してようやく日の目を見ることになった論文で、当時の苦労を思い出していました。前回は私の育ての親である北里大学の糸満盛憲名誉教授と昭和大学の渥美敬名誉教授が招聘されておりましたが、今回は九州大学の中島康晴教授がfacultyとして招聘されていました。関節温存にかけて、まさにJAPAN PRIDEといった先生が日本を代表されてご発表されるので素晴らしい内容で聞き応えが十分でした。準備も大変であったと後で聞き感銘をうけました。
この会は股関節学に熱心な方が胸襟を開いて議論できる会であるので、中島先生のもとにも、御発表後に海外からのレジデントが質問にきていました。毎回思うのですが、外国の若い先生方は気後れすることなく質問して積極的にdiscussionに参加していて刺激になります。国際学会は、留学中の仲間と旧交をあたた
めることができる場ですが、日本の先生方と一緒に色々なお話をできる貴重な場でもあります。
今回は九大の中島先生、濱井先生そして藤井先生ともご一緒させていただきました。日本の九大整形を背負っているという伝統の重みを間接的ではありますが、感じさせていただけるような貴重なお話も聞かせていただきました。先生方の仕事への熱心な取り組み方を知ることができた一方で、中島先生のユーモアがあって気さくで優しいお人柄にふれ、感銘をうけました。素晴らしい先生方とご一緒できて充実した時間でした。
この会で発表できるのは股関節分野で仕事をしたということの証明にもなるので、ぜひマリアンナの仲間と研究した成果をもってまたBern Hip Symposiumで発表したいものです。 頑張ります。