この度、第61回関東整形災害外科学会で発表した「足関節炎で診断された距骨頚部に発生した骨膜下猿骨骨腫の1例」という演題が、Case Report Award Session 優秀演題賞を受賞いたしましたのでご報告申し上げます。
今学会は仁木先生が会長を務められ、本賞は今回から新設されました。対象は初期および後期研修医で、投票は座長とZoom視聴者全員から受け、Sessionごとに最多得票の1演題が選出されるものです。
表彰状には私の名前と学会長である仁木先生の名前が記しであり、公式の場で教授から表彰を受けるのは医局員として非常に誇らしい気持ちです。
本演題の発表機会をいただいたきっかけは研修医時代に遡ります。私は研修医2年目最後に放射線科を選択しました。そこで2か月間、骨軟部腫瘍領域でご高名な橘川薫先生に師事し、手取り足取り骨軟部腫瘍の読影を教わりました。放射線科では毎週月曜に各分野の垣根を超えて興味深い症例を供覧する「月カン」と呼ばれるカンファレンスがあり、研修医にも順番が回ってきます。そこで橘川先生から発表の題材としていただいた症例が本症例で、その後、主治医である秋山先生に話したところ、整形外科医になってから発表の機会をいただいたというわけです。
演題内容を簡単に説明すると、足根骨に発生する類骨骨腫は全体の2~3%程度で、中でも距骨発生例は非常に稀な疾患であります。類骨骨腫の特徴としてプロスタグランジン産生能があり、これにより腫瘍周囲の炎症が惹起され腫脹や疼痛、特に夜間痛を引き起こしますが、足関節発生例は原因不明の足関節炎として確定診断に至るまで平均2年弱かかるとの報告があります。また、距骨頚部発生例では骨膜下発生が最多ですが、骨膜下発生を術前に診断した報告はありませんでした。本症例も原因不明の足関節炎として紹介Award 受賞されましたが、当院での詳細な画像診断により骨膜下類骨骨腫の診断を術前に得ました。
この点がこれまでの報告とは異なる点です。Xp単独での診断は困難で、CTでのnidus確認と鮮明なMRIで滞在を診断できるため、局在を術前に把握できれば鏡視下での低侵襲手術などの術式を選択できる可能性にもつながります。
最近はオンライン学会がスタンダードになりつつありますが、やはり実際の会場と緊張感が違うような印象を受けます。以前に賞をいただいた時は、コロナ前であったため実際の会場で、受賞の瞬間は上司と喜びを分かち合った思い出があります。しかし今回は3月の終わりで仙台への引越し準備に追われつつ自宅PCから参加していたので、ここだけの受賞の瞬間、上半身はワイシャツ・ネクタイ、下半身はパンツ一丁でした。急いでズボンを履いた思い出ができました。
冗談はこれくらいにして、やはり画面越しでは聴衆の表情や息遣いなどは分かりませんし、こちら側からも同様です。喜びも分かち合いづらいですし、どれだけ技術が進歩しても人と人とが実際に触れ合うコミュニケーションに勝るものはないなと感じました。コロナが一刻も早く収束し、最初からズボンを履いた状態で上司と喜びを分かち合える日が来るのを願っています。また、今後もこうしで受賞できるように日々研鑽を積み精進してまいります。
最後に、本症例発表に際して、根気強くご指導いただいた指導医の秋山先生、足班先生方、腫瘍に関しての様々な資料を提供いただいた中島久弥先生、病理画像を提供いただいた長宗我部先生、高木先生、読影所見について改めてご指導いただいた橘川先生、最終的な仕上げを何度もご指導いただいた仁木先生に感謝の意を表し終わります。ありがとうございました。