最先端の全方向性の股関節治療を
平成29年度に赴任しました。股関節学で有名なベルン大学(スイス)・OCM(ドイツ)で験算を積んで参りました。人工股関節手術はもとより、関節温存手術(骨切り術・股関節鏡視下手術)にも注力して小児から高齢者まで年齢の幅を超え、FAI・骨盤寛骨臼骨折・スポーツ外傷から慢性疾患まで幅広い疾患に対応できる最先端の「全方向性」の股関節診療が可能となりました。股関節疾患の患者様と御紹介いただいた先生方の双方にご満足いただける加療を行います。どうぞよろしくお願いいたします。
講師 山本豪明
聖マリアンナ医科大学整形外科学講座の股関節外科班は平成7年に2代目主任教授 青木治人 先生によって設立されて、3代目主任教授 別府諸兄 先生に引き継がれました。そして4代目主任教授の仁木久照 先生によって平成29年度から新しいコンセプトをもった股関節班が誕生しました。これまでは治療は主に人工股関節全置換術を中心に行われており、安定した手術成績で患者さんに貢献して参りましたが今後はさらに股関節温存手術(骨切り術・股関節鏡視下手術)にも注力して小児から高齢者まで年齢の幅を超え、骨盤寛骨臼骨折・スポーツ外傷から慢性疾患まで幅広い疾患に対応できる最先端の「全方向性」股関節班に生まれ変わります。
当班は大学病院本院に籍を置いて、関連病院とも協力して班を運営しています。各々が専門家として診療・手術・研究・教育に従事しています。
加療するのに以下のような対象疾患があります。
これらの疾患においてはまず、十分な保存加療を行うと同時に手術療法として股関節の温存が可能か、骨切り手術を検討します。詳細に画像検査を評価することはもちろんですが、手術にあたっては患者さんのライフスタイルも十分に考慮する必要があります。関節温存が難しい場合は人工股関節を用いた手術になります。その際も股関節機能を十分に機能させることができるように術式と設置位置の詳細な検討を経て筋腱温存に留意した最小侵襲手術(MIS)を第一に考えて手術を行います。
人工股関節置換術については、人工関節センターのサイトもご覧ください。
人工関節センターのサイトはこちらから
また、麻痺性尖足変形には創外固定を用いた、漸次矯正手術を行っています。
上図:骨切り手術
左図:ショートステム
右図:術前計画 3Dテンプレート
左図:術前
右図:術後
これらの疾患では股関節内におこっている障害を十分に診察し、評価した上でさらに画像検査や専用のソフトウェアなどを駆使して原因を追究してから治療をおこないます。十分な保存療法を行った上で手術加療が必要な場合には関節鏡視下手術や股関節を安全に脱臼させて(surgical hip dislocation)関節内処置をおこなうこともあります。
FAIとsurgical hip dislocation後
3.大腿骨頸部および転子部骨折・骨盤寛骨臼骨折
股関節周囲の外傷は特殊な場合を除いては多くは手術療法を選択します。転子部骨折は高齢者の骨折として多くみられますが当科では解剖学的整復に重きをおいた手術を行い、早期離床を目指して手術をしています。また3次救急を擁しているため骨盤寛骨臼骨折の症例も多くあります。骨折部の安定と良好な骨癒合のため、可能な限り手術による骨接合術をおこなっています。
不安定性骨盤輪骨折とその術後
4.小児股関節疾患(発育性股関節形成不全、ぺルテス病、大腿骨頭すべり症など)
保存療法、手術を合わせて治療方法を考えます。発育途中の股関節の手術を行う際は2次的な変形を起こさないように細心の注意が必要です。手術を行う際は安定した股関節を目指した手術を行い、十分なremodelingが起こる環境を整えます。
発育性股関節形成不全(左股関節)とぺルテス病(左股関節)
5.腫瘍性・感染性疾患
当科では転移性骨腫瘍と良性骨腫瘍を扱います。外科的に切除が必要な場合は患者さんの機能的な予後に配慮して手術を行います。感染症については根治に徹底した治療が必要です。手術を行う際には関節鏡視下手術をはじめ、時に関節を開放して十分な創清掃と洗浄を行います。